目的:近年,毛髪から疾患診断を試みた研究がしばしば行われている.しかし,そのほとんどは健常人と疾患患者の生データよりStudent’s t-testなどによる有意差検定を用いて判定を行っており,データの機械学習を行ったものは少ない.そこで本研究では,機械学習を用いて毛髪からの疾患関連成分による診断の可能性について検討することを目的とした.
方法:糖尿病,高血圧,男性型脱毛症,うつ病,アルツハイマー型認知症,脳梗塞の6疾患のいずれかで通院している疾患患者,疾患診断においてこれら6疾患と診断されていない健常人の毛髪を分析対象とした.毛髪成分は,ミネラルや遊離アミノ酸,ステロイドホルモンを分析した.機械学習アルゴリズム,ランダムフォレストを用いて,健常人と各疾患患者を判別するモデルを構築し,判別の重要項目を抽出した.
結果:毛髪内に含まれる成分から疾患予測を行うために機械学習を用いた結果,ミネラルについては,リチウム,ヨウ素,リンが,遊離アミノ酸については,システイン,システイン酸,グルタミン酸,ヒスチジン,リシン,メチオニン,セリンが,ステロイドホルモンについては,プロゲステロン以外が重要な因子としてあげられた.
結論:機械学習は,毛髪を用いた疾患予測の研究において重要成分の絞り込みに有意義な方法であることが示唆された.今後,さらに毛髪を用いた成分解析の検討症例数を増やすことで,疾患マーカーの同定につながることが期待される.
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