2020年に新たに提起された医療訴訟件数は,2011年から2019年までに引き続きほぼ横ばいの状態であった。しかし,終了した医療訴訟件数は,2011年から2019年までの9年間はほぼ横ばいの状態が続いていたが,2020年はコロナ禍の影響により大幅に減少した。そのため,現在進行中の医療訴訟件数は増加したものと考えられる。
診療科別の訴訟件数は,多い順に,内科,外科,整形外科,産婦人科であった。小児科はわずかであった。しかし,医師1,000人ごとの医療訴訟件数は,整形外科,外科,産婦人科,内科の順となった。したがって,外科系の診療科は内科系の診療科に比して医療訴訟になり易い傾向であったといえる。
判決では,認容よりも棄却が圧倒的に多かった。しかし,医療訴訟の終わり方として,判決は約1/3に過ぎず,約半分は和解によって終了しているので,医療訴訟になれば医療側に有利とは必ずしもいえないと考えられる。医療訴訟を医療側で担当している弁護士から見れば,いずれが有利であるかは,ケース・バイ・ケースである。
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