2000年以降,食の安心や安全をめぐる諸問題に対して
流通
は対応を迫られてきた.その対応はトレーサビリティや「顔が見える」野菜に象徴される.この一連の動きは,大量生産・大量
流通
システムの限界を示唆していると考えられる.本稿は,スーパーによる「顔が見える」野菜の調達を手がかりに新たな
流通
の潮流を検討することを目的とする.「顔が見える」野菜は,
流通
を「個別化」することによって実現されている.「個別化」した
流通
はシステム全体としてリスクが大きくなるが,スーパーも含めた生産と
流通
の各段階で少しずつリスクを分散するという新しい考え方に基づいており,その点でかつての仲卸売業者や産地にリスクが集中していた大量生産・大量
流通
のシステムとは一線を画している.さらに,「個別化」した
流通
における生産-
流通
-消費関係は,各主体が関係を深め,密接で相互協力的であり,信頼に基づいた継続的な関係が構築されている.
流通
の「個別化」は,
流通
による新しい価値の生み出し方や大量生産・大量
流通
システムの限界とそこからの脱却の動きを示している.しかしながら,「個別化」した
流通は大量流通
の仕組みに支えられていることと,価格訴求のマーケットの存在を考慮すると,今後の
流通は従来の大量流通
の仕組みと「個別化」した
流通
が並存した構造を持つものと考えられる.
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