本稿は, 第2次世界大戦後におけるわが国の老親と子どもの関係の変化を, 社会変動との関係でとらえ考察している。とりわけ老親扶養の変化について, 経済的扶養, 身体的 (介護) 扶養, 精神的扶養の3側面から検討する。
戦後の民法改正は扶養意識に大きな変化をもたらし, その後の国民皆年金, そして高齢者介護サービスの発展は, 老親扶養意識に大きな影響をもたらせた。ここではその変化の現れると考える同居扶養の変遷に焦点を当て, 年金の発達, 介護サービスの普及との関連について検証し, わが国の老親扶養の特性を論じている。
第1に, 同居率の低下は, 年金の発展および介護サービスの拡大普及と逆相関し, 第2に, 老後に頼る子は男子よりも女子に期待が移りつつあること, 第3に, 依然として長男の配偶者に介護期待が強いものの相続権はなく, 介護と相続は必ずしも関連して認識されていない, などの点が論証されている。
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