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クエリ検索: "深田萌絵"
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  • ―「平和国家」体制の桎梏への対応を考える
    松村 昌廣
    情報通信政策研究
    2022年 5 巻 2 号 73-94
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2022/03/31
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    近年、我が国政府のサイバーセキュリティ政策に対する取り組みは、一見かなり充実してきた様相を呈している。しかし、日本国内の専門家の評価は全く逆の非常に否定的な評価が顕著である。なぜか。

    本研究は先ず米国のサイバー政策における主要な戦略概念をその変移の背景、長短そして含意を焦点に分析した。次に、日本が米国と政策連携・協調を行う上で制約条件となる既存の日本のサイバーセキュリティ戦略・体制の特徴を分析した。最後に、そうした特徴と日本のサイバーセキュリティ政策における展望と施策を踏まえて、サイバーセキュリティとその領域を横断する総合的な政策提言を行った。

    本研究の結果、我が国のサイバーセキュリティ体制・戦略が長年の努力にも拘わらず、日本国憲法による「平和国家」体制の下、非常に歪な形で形成されてきた現状が明らかになった。戦略・政策文書は充実してはいるが、縦割り行政の克服や抑止力の保有・行使の点で、かなり未発達な状態に陥ったままである。もちろん、根本的な解決は改憲を含む「ビックバン」によって可能だとは予見できるが、その実現は軍事安全保障・防衛における集団的自衛権に基づく武力行使と同様、非常に困難である。

    従って、今後のサイバーセキュリティ政策は既存の体制・組織を前提に漸進的に改善・強化していかざるを得ない。具体的には、内閣サイバーセキュリティ・センター(NISC)を危機管理権限、組織、人員・能力の点で強化しつつ、「サイバーセキュリティ庁」の実現を模索する一方 、サイバー攻撃の阻止やその被害を限定する拒否的抑止を強化することになる。ただ、サイバー攻撃による懲罰的抑止は行わず、その代わり、米国の「サイバーの傘」の下に入り、その有効性を高めるよう対米政策連携・協力を推進することになるだろう。

    今後の日本のサイバー戦略は、情報通信機器・システムと情報通信ネットワークに関するサイバーセキュリティ政策では、米国その他の主要同盟国の動向に立ち遅れないように努力する一方、法執行や外交など非サイバー政策手段を総動員して総合的な取り組みを行うことが最も望ましい。特に、依然我が国が部分的に比較優位を保持する半導体や通信機器等、サイバー関連のハードウェアの技術や生産を通じてサイバーセキュリティを強化し、この分野におけるパワーと影響力を高めることが望まれる。

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