膜の本質的機能は,被透過体の認識による選択的な透過による分離と,それを輸送に結びつけた機能としての能動的輸送にある。この被透過体の認識を積極的に利用した膜として,キャリヤー膜があり,それは単に被透過体の選択的透過のみならず,能動的輸送をも可能にする。また,それには流動キャリヤーと固定キャリヤー膜とがある。これらの機能発現の原理とキャリヤーの認識機能を考察し,それぞれ,ガリウムの選択的能動輸送ならびにアルカリ金属イオンの選択的能動輸送の具体例を示した。一方,膜の機能展開に対して,被透過体を従来の分子やイオンから電子や光子へ拡張し,対象相を従来の気相や液相から固相へ拡張する必然性を考察し,さらに,認識機能の情報変換への具体的応用として,電子伝導の可能なマトリックスとして考えられる高分子導電膜への機能分子の埋め込みによってできるキャリヤー固定導電膜の合成法と,その膜による新たな機能を展望した。
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