志賀高原の亜高山針葉樹林の鳥類群集について1973年から1981年の9年の繁殖期に調査された。またその附近のいくつかの針葉樹林,落葉広葉樹林の鳥類群集と比べられた。調査結果は針葉樹林部,落葉広葉樹林及びその両者の推移帯に分けて分析された。亜高山針葉樹林の鳥類群集の特徴は極端に高い密度(1.0♂/ha以上)と安定した個体群(変異係数0.1以下)を持っていることである。これらはヒガラ,キクイタダキ,メボソムシクイ,ルリビタキの4種である。亜高山針葉樹林の下縁では高い種の多様性,高い個体群密度,高い群集の多様度を示す特徴がある。これは広葉樹林からの浸入種(シジュウカラ,キビタキ,コルリなど)と推移帯の種の存在であらわれる(クロジ,エゾムシクイなど)。ヒガラを除く代表種は推移帯を経て広葉樹林部でにわかに消失する。鳥類群集の分析の一つとして,適応空間(中村1978)の概念を更適用した。針葉樹林の鳥類群集の全個体数の70%は3つの主要な適応空間から成り立っている。それはシジュウカラ型,ムシクイ型及びツグミ型適応空間である。代表4種の内ヒガラはシジュウカラ型に,キクイタダキとメボソムシクイはムシクイ型に,ルリビタキはツグミ型に入る。亜高山針葉樹林では特に,ムシクイ型適応空間の大きい比率を持つという特徴がある。
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