体脂肪の脂肪酸組成は脂肪融点に関係し、不飽和脂肪酸含量の高い牛肉は脂肪の融点が低く、口溶けが良く好ましいとされる。一価不飽和脂肪酸(MUFA)合成に関わるstearoyl-CoA desaturase(SCD)のc.878C>T(p.A293V)のAla 型はMUFA 含量を高め、体脂肪の融点を下げる優良型であることが報告されている。また、この多型が黒毛和種の主要な枝肉形質に影響しないことも報告されている。しかし、g.7534G>A(3’UTR)が黒毛和種とリムジンのF2 集団でBMS と関連することが示されているため、改めてc.878C>T、g.7534G>A およびg.7864C>T と枝肉形質の関連解析を行った。その結果、これら3 SNPsはBMS と関連を示さず、光沢、締まり、きめと関連を示した。3 SNPs の連鎖するアレルがこれら3 形質に対して同じ効果を示したため、これはアミノ酸置換を伴うc.878C>T による効果であると考えられた。c.878C>T のアレルC はMUFA 含量を高める優良型であるが、光沢、締まり、きめに対しては負の効果を示した。締まりときめはおいしさに繋がる形質であると考えられているため、c.878C>T の情報を利用するためには注意が必要であると考えられた。
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