塩碁性の弱い溶媒であるニトロメタンと塩基姓の強い溶媒であるジメチルスルポキシド(DMSO),N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)および炭酸プロピレン(PC)との混合溶媒を用いるとニトロメタンに対するDMSO,DMFおよびPCの混合比の増加につれてPb
2+イオンの半波電位は負に移行する。混合比の変化によって生ずる半波電位のシフトからDMSO,DMFおよびPC中でのPb
2+イオンの溶媒湘数を検討した結果,それぞれ5.7,5,9,5,8となり水和数(5.7)とよく一致した。したがってこれら3種の溶媒の溶媒和数は6であると考えられる。
またPb
2+イオンの溶媒和に対する生成定数を求めるとその対数値はDMSO(ドナー数29,8),DMF(26.6)およびPC(15.1)についてそれぞれ13,7,10,2,2.5となり,溶媒の塩基性をドナー数からみるとドナー数の大であるDMSOの場合に生成定数はもっとも大きくなることが示される。
Pb
2+イオンの拡散電流値(i
d)は3種の溶媒いずれについてもニトロメタンに対する混合比の増加につれて減少し,そめ減少の割合は混合溶媒の粘度(η)の大きいものほど大きくなることが観察された。そして,拡散電流値と粘度の平方根の値との積(i
d・
η1/3)は混含溶媒いずれの場合にも一定とならず,混合比の増加につれて減少し,PC系においてその減少はいちじるしい。この原因はPb
2+イオンに溶媒和しているニトロメタン分子と,これら3種の溶媒の分子と置換するときニトロメタンに比較して分子量にもっとも大きい差のある溶媒であるPCの場合に,溶媒和Pb
2+イオンの拡散係数の減少がもっども大きくなることによるものと解釈した。
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