音楽演奏において,視覚情報は
演奏者
の表現を聴取者が理解する上で重要な役割を果たしている.中でも視線は,これまでにも定性的にはその重要性が指摘されながら,定量的にはほとんど検討されてこなかった.そこで,本研究は,実際に演奏中の視線行動を分析することにより,音楽演奏に果たす視線の役割を明らかにすることを目的とした.手続きとして,音楽を専攻する学生で構成されたポピュラー音楽バンドの演奏を録画し,各
演奏者
の顔の向きを分析した.その結果,
演奏者
は楽曲構造に依存して互いに頻繁に視線を交わすこと,楽曲上の中心的な役割を担う者を見ることが示された.このような行動は,より良い演奏音の産出という
演奏者
間コミュニケーションのみならず,観客の注意を誘導し,次の音楽的主役へ向ける
演奏者
-聴取者間コミュニケーションの役割もあると考えられる.
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