本研究では、民間の交通関連データや交通系ICカードデータに着目し、地域公共交通計画の策定や路線再編の検討におけるデータ活用の実態と課題を明らかにすることを目的に、全国の政令指定都市・中核市へのアンケート調査、及び交通系ICカードデータを活用する熊本市へのヒアリング調査を行った。その結果、既にデータ活用を行う自治体の68.6%が「説得力増強に寄与した」と回答しており、交通系ICカードデータは、交通事業者間の利害調整や交通需要の定量的分析・評価に一定の効果があった。その一方、全体では交通系ICカードデータの活用率は30%程度に留まっていた。その理由は、交通事業者から交通系ICカードデータ収集の困難性、データ活用のための人員や予算の確保の困難性などであった。よって、各都市圏で公共交通事業者が主体となりデータ提供のルールづくりや、自治体職員の専門知識やスキルのレベルに関係なく路線再編等の検討をデータに基づき行える体制づくりに対して支援策を充実することが必要である。
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