メタリングロールの腐食メカニズムはクロムめっきに存在するクラックが拡大し, 素材や下地めっきまで達することにより電位差腐食を起こす。これまでの研究では貫通クラックの発生をいかに抑えるかを主眼に進め, めっき種, めっきの表面仕上げ方での寿命差を求めてきた。今回, 新たに電気化学的手法を用いて電位差腐食の検討を行った。
各種皮膜の電気化学測定から耐食性を評価すると, クロムめっき, タングステンカーバイド溶射が測定後の表面観察で腐食痕がなく耐食性が高いことがわかった。またニッケルータングステン合金めっきは電位の上昇とともに不動態化が観察され, 耐食性が高いことがわかった。しかしめっき皮膜, 溶射皮膜のいずれの場合も皮膜が溶解していくような事例はまれであり, 腐食事例のほとんどは素材まで達する割れにより電位差腐食を起こすことで発生している。そのため皮膜だけの耐食性を評価するだけでは不十分であり, 皮膜と下地めっき (または素材) とが共存するような系での測定が必要である。そのため表層皮膜に帯状の人工欠陥を形成したサンプルでも測定を行った。ニッケルめっき上のタングステンカーバイト溶射は耐食性が低いという結果になり, 測定後の表面観察でも黒く変色していた。ニッケルめっきやSUS肉盛溶接上のクロムめっきは自然電位は貴な位置にあったが測定後の表面観察で下地に腐食痕が観察された。ニッケルタングステンめっき上のクロムめっきはタングステン皮膜部に不動体化が観察され耐食性が高いことが示された。
現在, テストプラントサイズの試験機で実機を模した試験を行い, 電気化学測定結果を検証中である。
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