細菌性食中毒1事件当りの患者数の変動について, 病因物質・原因施設という要因に注目し, 統計的な手法を用い観察した。供試データは「全国食中毒事件録」の1984年~1988年の患者数, 病因物質および原因施設である。なお, 検討した病因物質は腸炎ビブリオ, サルモネラおよびブドウ球菌である。その結果は,
1.細菌性食中毒患者数は原データでは正規性を示さないが, 原データを対数あるいはべき乗変換すると正規分布に近似させることができた。実用上, 対数変換 (Log (x+1) ) し以下の解析に用いた。
2.細菌性食中毒患者数に相関の高いのは, 原因施設であった。
3.細菌性食中毒患者数について, 平均値および発生限界 (平均値±2×標準偏差) を病因物質別, 原因施設別, 病因物質×原因施設のクロス別に求め, 患者数の中心的傾向および発生区間を推定することができた。
1) 患者数の多い原因施設は, 学校・保育所, 仕出・弁当屋, 事業所給食, 旅館, 寮・寄宿舎, その他の業種, 飲食店, 製造業であり, 上位に位置するのは食事提供数の多い業種であった。
発生区間が広いのは学校・保育所, 製造業, 仕出・弁当屋, 事業所給食, 飲食店, 旅館, その他の業種, 販売店, 寮・寄宿舎, 家庭, 不明の順であった。
2) 患者数の多い病因物質は, 腸炎ビブリオであった。
発生区間が広いのはサルモネラ, 腸炎ビブリオ, ブドウ球菌の順であった。
3) 患者数における病因物質と原因施設のクロスでは, サルモネラと学校・保育所, ブドウ球菌と学校・保育所, サルモネラと販売店, 腸炎ビブリオと製造業, サルモネラと旅館, 腸炎ビブリオと仕出・弁当屋が特に多かった。
発生区間が広いのはサルモネラと学校・保育所, ブドウ球菌と学校・保育所, サルモネラと販売店, サルモネラと仕出・弁当屋, サルモネラと旅館, ブドウ球菌と製造業であった。
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