本論文は系統的社会観察に関するレビューである。まずReissによって定式化された,社会学における系統的社会観察について紹介し,方法論的問題点と利点および限界について概観する。続いて
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における系統的社会観察について,社会学における系統的社会観察と対比しながら議論する。この議論を受け,系統的社会観察がその有効性の認識にもかかわらず,実施のための負担が大きいため,2000年頃までは採用する研究は社会学や
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の一部に限定されてきたことを指摘する。次に近年,健康環境研究において,活発な活動を可能にし,促す生活環境の重要性の認識の高まりから,生活環境を測定するために系統的観察の使用が拡大していること,さらに,既存の景観画像の利用可能性拡大と機械学習の発展が,自動処理としての系統的社会観察の実行可能性を広げていることを紹介する。最後に,そうした状況における,
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者・社会科学者の果たすべき役割について考察する。
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