近年、人為影響により、
生態系
のレジームシフトが起こっていることが指摘されている。これは、人間活動が
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の持つレジリアンスを侵食し、
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が本来持つ自己修復機能を低下、あるいは崩壊させていることによる。その結果として、
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サービスが劣化、あるいは変化し、人間社会への悪影響も危惧されている。
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のレジリアンス低下の要因は、環境汚染、搾取・伐採、気候の変化、撹乱体制の変化など、非常に多岐にわたる。いずれも
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の脆弱化を招き、
生態系
が以前は吸収できた負荷が今は吸収できない状態になっていること、その結果、生物にとっても人間社会にとっても望ましくない状態へと
生態系
がレジームシフトを起こしていること、が指摘されている。本稿では、このような
生態系
のレジームシフトを引き起こすリスクや、その結果、
生態系
サービスを劣化させるリスクに着目し、
生態系
管理におけるリスクマネジメントについて言及している。本稿では、特に、
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の本質的な変動性や非平衡性をどのように扱うのかを重要と考える。そのためには、「順応的管理」、「自然変動性」、「時空間スケール」、「人為影響の評価」が、
生態系
のリスクマネジメントにおける留意点として挙げられる。具体的には、1)個々の
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がシフトを起こさずに済んだ環境変動量からレジリアンスを定量化できる可能性があること、2)実験・観測・モデリング・メタ解析・古生態学的手法などにより個々の
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の構成や構造の自然変動性に関するデータを得る必要があること、3)焦点を当てるべき特性や環境要因、時空間スケールには、留意する必要があること、4)時空間的に限られた既知の情報を、実際の
生態系
が存在するより広いスケールへと反映させる際に必要な留意点を明確化すること、が科学的アプローチにおいて重要であると考える。
生態系
の動的なプロセスを尊重しつつ、
生態系
のリスクマネジメントを行うためには積極的な
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の復元試験、積極的な保全策の適用、科学者間あるいは科学-社会間での積極的な議論、既知の知見の自然-人間システムへの応用、既存の情報を活用したシミュレーションモデル、
生態系
の継続的な観測、そして、順応的な管理姿勢が、今後さらに求められる。
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