本稿は,社会保障審議会での住宅扶助に関する議論と住宅扶助費引き下げに反対する意見があるなか,
生活保護
受給世帯の住宅扶助の現状について一定の客観的分析結果を提示し,議論に資することを目的としたものである.
民間の不動産情報サイトおよび家賃債務保証会社のデータを用いた分析では,以下のような結果が得られた.1)住宅扶助費は基準額近辺に集中している.2)
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受給者は住居選択時に基準額に強い影響を受ける.3)年収300万円未満の世帯と比較して
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世帯の居住水準はやや劣っている.4)地域別の募集家賃の件数分布と住宅扶助基準額の関係は地域によって異なる.5)
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世帯の家賃はそうでない世帯に比べて統計的に有意に高い地域が存在する.
住宅扶助費の見直しとは一律の引き下げを意味するものではなく,客観的事実に基づいて適正な水準を定めることである.同時に住宅セーフティネット全般の制度を再構築する必要がある.
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