<はじめに> 外来において発熱など感染症を伴わない頭痛を主訴として来院した場合、大抵頭部CT/MRIや脳波で異常はなく、起立性調節障害(OD)として対処されてしまう例が多い。一方、子どもたちはテレビ・ゲーム・パソコン・携帯電話など様々な発光画面を見ている。それらはいずれも24時間使え、使用者がスイッチを消さない限り作動している点に問題があり、サーカディアンリズムを乱す原因の1つと考えられている。頭痛を引き起こす原因の1つとしてこのような
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境の乱れが関与しているのではないかと考えた。そこで頭痛を呈した子どもたちがどういう
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境に置かれていたのか検討したので報告する。
<対象および方法> 対象は無熱性の頭痛を主訴に当科外来を受診した学童23(男13)例(平均年齢12.1±2.2歳)である。副鼻腔炎・発熱など感染症を伴った例、および頭部CT/MRI and/or 頭痛間欠期脳波で異常が認められた例は除外した。全例に起立試験を行い、ODの診断基準に合致するものをOD群、合致しないものを非OD群とした。また、
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境整備として初診後1-2週間は、睡眠表を記入させて早起きの習慣をつけること、TV・ゲームは合計で2時間以内にすること、頭痛薬はなるべく飲まないことなどを説明した。それでも改善の無い場合は頭部CT/MRI and/or 脳波検査を施行した。OD群および非OD群の2群に分けて
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境因子の違いについて後方視的に検討した。
<結果> OD群と非OD群で年齢差はなく、65%が中学生であった。頭痛以外の症状としては嘔気・嘔吐、アレルギー性鼻炎が多かった。不登校は2例のみであった。頭痛の部位は右側で特に側頭部が多かった。頭痛の種類は片頭痛が多かった。両群とも半数以上で1日平均5時間以上のTV・ゲーム視聴が認められた。非OD群の75%にサーカディアンリズムの乱れがあった。OD群は塩酸ミドドリンに反応して軽快する例が多く、再診率は高かった。
<考察> 無熱性頭痛を主訴に来院した場合、一般外来では解熱鎮痛剤の投与で対処してしまうケースが多い。一方で、TV・ゲームなどの視聴時間が長いことや、それによるサーカディアンリズムの乱れなど現代社会における
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境の乱れも頭痛の患児には多く認められる。
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境整備により頭痛の改善した例はOD群で47%、非OD群で63%と非OD群で頻度が高かった。今回睡眠表に入眠・覚醒時刻やTV・ゲームの視聴時間を毎日記入させることによりサーカディアンリズムの乱れを自ら自覚し、
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境を変えることで頭痛の改善した例が約半数に認められた。解熱鎮痛剤の乱用によるdrug induced headacheを防止するうえでも一般外来で早期に
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境の乱れを指摘し改善することにより頭痛の慢性化は防げるものと考えた。TV・ゲーム・パソコン・携帯電話などは全て発光画面であり、光により夜間のメラトニン分泌が抑制され、サーカディアンリズムを乱すことで頭痛が発症しているのではないかと考える。また、長時間視聴による眼精疲労と同じ姿勢を保つことによる筋の疲れなども
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境因子による頭痛の原因の1つと考えられる。従って、原因不明の小児慢性反復性頭痛の原因の1つとして、
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境因子による頭痛があるものと考える。
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