【目的】当院で提供しているリハビリテーションは地域にて選ばれる施設として位置付けされているのだろうかという疑問を基にアンケートにての顧客満足度調査を行ったので報告する。
【方法】当リハビリテーション科が関与する2010年6月時点での外来患者様57名入院患者様35名通所リハ利用者様20名の中から各10名ずつを無作為抽出(以下,RCT)し計30名(男性4名女性26名平均年齢76.7±9.9歳)とした。なお, 除外規定として認知症等を有しアンケート回答不可である対象者の場合は再度RCTを行った。方法は,田中らの考案した顧客満足測定尺度(Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction:CSSNS)を参考に当施設に合う質問項目に改変した。条件として,リハビリテーションを提供する前に聴取しリハビリテーション科 以外のスタッフの協力を得て聞き取り調査を行った。アンケート内容は、1.サービス担当者との関係性欲求の充足2.
生理的欲求
の充足3.全体的な満足度4.施設の利用意向5.他者への推奨意向 6. その他の意見や希望とし,1から5の項目に関しては,強く感じる(5点)まあまあ感じる(4点)ふつう(3点)あまり感じない(2点)全く感じない(1点)とし点数化を行った。また,個人属性の調査項目として,年齢・性別・サービス利用期間・要介護区分(通所リハのみ)を用意した。統計処理として外来(A)・入院(B)・通所リハ(C)3群間での多重比較をMann-Whitney U-test with Bonferroni correctionを用い有意水準5%未満とした。なおデータは欠損のあるものは除外した。
【説明と同意】当病院の倫理審査会にて承認を得,全ての対象者にインフォームドコンセントが得られた後調査を行った。
【結果】アンケートの有効回答率は98%であった。個人属性に関しては,男性4名,女性26名で平均年齢76.7±9.9歳であった。サービス利用期間(平均)が外来(A)5.7ヶ月,入院(B)で1.5ヶ月,デイケア(C)で32.2ヶ月であった。デイケア利用者における要介護区分は,介護1が5名,2が2名,3が3名であった。アンケート結果として,全項目の総点(50点満点)での平均が(A)36.5点,(B)41.8点,(C)40.9点であった。項目別で比較すると項目1のサービス担当者との関係性欲求の充足(20点)において(A)13.6点,(B)17.7点,(C)17.5点でAにおけるB,C群間での比較にて有意差(p<0.01)を認めた。項目2の
生理的欲求
の充足(15点)が(A)9.8点,(B)11.8点,(C)10.8点で,項目3の全体的な満足度(5点)が(A)3.5点,(B)4.3点,(C)4.0点となり項目2・3ともにA,B間にて有意差(p<0.05)を認めた。項目4の施設の利用意向(5点)においては(A)4.4点,(B)4.0点,(C)4.6点で3群間に有意差は見られず,項目5の他者への推奨意向(5点)においては(A)3.5点,(B)4.0点,(C)4.2点でA,B間にて有意差(p<0.05),A,C間で有意差(p<0.01)を認めた。
【考察】 外来にての関係性欲求の充足に満たない一因として,担当者の個別性や時間,手技,接遇によるインフォームドコンセントの相違が考えられた。これは,個々の患者また利用者に対してサービス提供者が異なること,顧客間での意見・情報交換によりサービスの相違を感受することが考えられる。当院での外来リハのシステムから考えると前者が顧客との関係性を阻害している因子であることが大きいため,担当制をより明確化させるために外来リハシステムの見直しが必要と考える。また,外来担当者とのマッチングを臨床での管理者が判断する必要がある。外来からリハオーダーされた患者様は理学療法を理解するまでに時間を要し,御自分の治療や内容に不安を抱えられているものと考慮し,それを解決する方法論を示唆された。項目別での比較をすると
生理的欲求
の充足が他項目と比べ低い点数を示した。
生理的欲求
の充足はリハビリをしてからの症状や健康面の改善をみるもので入院と外来での差は障害の回復段階に違いがあるため必然的に生じるものと推測される。この項目における満足度は治療効果に直結してくるものであり当院での理学療法技術の質をより高めていく必要性を示唆するものと考える。改善策として各スタッフの知識・技術向上のための努力は基より担当者の個別性を高めるためのリハシステムの見直しと当院での新人教育プログラム等のシステム見直しの必要性がある。PT質的問題は多くの施設にて存在する事だが, どうスタッフ間でスタンダード化を図っていき,それを顧客満足度向上へ反映させていくかが今後の課題であると考慮する。
【理学療法学研究としての意義】我々が日常的に提供している理学療法に関して,どれだけ患者様からの希望,ニーズに対応できているのか客観的判断ができ患者満足度を更に高める為の理学療法士の質的問題と臨床現場での職場内研修の方法論を見直す事となった。
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