本稿の目的は純粋公共中間財を含む一般均衡モデルを用いて様々な命題が成立するための条件を明示することにある.各
生産要素
所得に対する課税は, リンダール・プライスィング方式に基づいて決定される.公共中間財投入量に依存する
生産要素
効率性増大関数が, すべての私的産業のすべての
生産要素
について比例関係にあれば, 税率は一様となり, 2つの私的生産部門の要素集約性が異なれば, この体系は安定的となり, しかも2つの私的生産財に関する生産可能性曲線は原点に対し, 厳密な凹となる.このような特徴を持つ2私的生産物, 1公共中間投入物, 2
生産要素
モデルのもとで, この経済が小国開放経済であれば, ボーモル仮説とワグナー法則が成立するための条件は, 交易条件不変とすれば容易に求められる.すなわち, 一般的な技術進歩のある経済においては, 税率が上昇しないか, すなわち, 税率の公共中間財投入弾力性が非正であるか, あるいは技術進歩の型が各私的部門においてピックス中立的で, かつ同率の進歩率であることがボーモル仮説が成立するための十分条件である.ワグナー法則の必要十分条件は税率の上昇することである.したがって, この法則は経済成長のパターンが主に物的
生産要素
量の増大であるか, 技術進歩の型が各私的部門においてピックス中立的で, かつ同率の進歩率であれば税率の公共中間財投入弾力性が正である時に成立する.さらに, 関税収入が国民に一括再分配されず, 公共財生産費用に流用される場合は, 公共財生産に一種のディストーションが生じ, 必ず経済厚生を低めることになる.また, 外国からの経済援助が公共財の生産費用の補助に限定される場合は, 税率の下落, すなわち, 税率の公共中間財投入弾力性が負であることが経済厚生を高めるための必要十分条件となる.したがって, ワグナー法則が成立するような経済においては, 外国からの経済援助は却ってその国の経済厚生を低めることになる.最後に, 税率が公共中間財の投入量の変化によって変動しない場合, すなわち, 税率の公共中間財投入弾力性が零の場合には, 経済援助によって, 経済厚生不変のままクラウディング・アウトが生じる.
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