目的 食の安全・安心が社会問題として大きく取り上げられるようになり,一般の関心が高まるにつれて論点が多様化・複雑化している.そこで食の安全・安心に関する問題が具体的にどう認識されているのかを把握するため,高校生・大学生・教員を対象に予備的なキーワード収集調査を行い,それぞれにおける問題認識を検討した.
方法 高校生35名,大学生42名,小・中・高等学校教員18名の計95名に対して「食の安全」に関して自身が不安に思っていることとして想起するキーワードを3つまで挙げさせ,収集・分類した.調査は2011年11月から2013年11月にかけて実施した.
結果 想起して挙げられたキーワードは219個で,それらは24のカテゴリーに分類することができた.全体で最も多く挙げられたキーワードは「食中毒」であった.次いで多い順に「食品添加物」「農薬」「放射能」「輸入食品」が挙げられた.対象者別では,高校生, 大学生で「食中毒」がもっとも多く出現していたのに対し,教員では「食品添加物」がもっとも多かった.一方,教員での出現が多かった「
産地偽装
」や「不正表示」は,高校生,大学生では比較的少なかった.食の安全は,ある食品を摂取したときの健康への影響として捉えられることが多いが,高校生や大学生からは「栄養バランス」「食費」といった特定の食品問題に限らないキーワードについても挙げられていた.教員からはそれらのキーワードは挙げられていなかった.若い世代では食の安全についての論点を,「食べること(食べられないこと)に伴って生じる健康への影響」と広く捉えなおす視点があることが示唆された.
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