理科教育における生徒実験の重要性は広く認識されている.このことは高校物理の指導においても同様である.ところが物理基礎と物理の双方において,生徒実験の実施状況は単元によって大きく異なり,電磁気分野,とりわけ電流と回路では実験の実施状況が芳しくないとの調査結果がある.これには時間的制約や実験環境の不十分さなどいくつかの要因が考えられるが,実験を行うにあたっての種々の困難を克服し,実験実施のハードルを下げることが求められる.すなわち,短時間で準備・実験実施・片づけができて,さまざまな回路を効率よく作成・測定でき,かつ生徒主体の系統実験や探究活動を行い易くすることが,生徒と教師の双方にとって有益である.そこで本研究では,市販の回路素子とブレッドボードを用いて回路実験キットを開発することとした.このキットでは学習内容について系統的な実験を行うことができるように複数の回路定数の素子を取り入れたが,素子数がむやみに多くならないよう,最小限の組み合わせとした.その際,一連の学習内容を検定教科書に基づいて体系化し,その全てを効率よく実験できるようにした.また授業実践を通して,開発したキットの特性と問題点を整理した.
抄録全体を表示