都市近郊の宅地造成化にともなって孤立化しつつある林地における野鼠類の生息状況を調査するため, 横須賀市鷹取山を中心として近年宅造化が進められている追浜, 田浦, 神武寺, 安針塚の4地区を選んで小型スナップトラップを1973年9月から11月までの間に7回セットして捕殺野鼠を調べた。
追浜および田浦の孤立林では野鼠類が生息していないのを確認したが, これは極度の宅地化による林地面積の縮小のためで, 約7ヘクタール以内の林地面積では
Apodemus属は, 個体群を維持できないと考えられる。
神武寺では3回にわたる調査を行って10頭の
Apodemus speciosusと2頭の
A. argenteusを捕殺したが, この地方の
Apodemus属は, 湿生林, 西または北向きの日照条件のよくないスギ, ヒノキの植林地, あるいは沢の近辺など比較的湿潤な場所に集中的に住んでいるのが観察された。
採集した野鼠類の胃内容を顕微鏡によって観察した結果は,
A. speciosusは漿果, 節足動物類が多く発見され, 乾果の類はあまり見られなかった。
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