病院の栄養科は入院患者に安全かつ衛生的に食事を提供しなければならない.食中毒防止対策では, 栄養科職員だけでなく, 食品納入業者および患者家族などによる病院内持ち込みに対する的確な対応, つまり食品衛生の知識と教育が重要である.今回この三者の衛生管理対策の実態を把握する目的でアンケート調査を行ったところ, 以下の結果を得た.
1.調理作業前の手指消毒の実施率は病院では100%, 食品納入業者では66.6%, 一般家庭では42.1%であった.
2.食品納入業者における衛生管理上必要な食中毒の認識度をみると, 菌種名および食中毒の主要原因食品の認識率は食品衛生責任者ではそれぞれ68.8%, 39.6%, 従業員では61.8%, 33.3%であった.
3.病院栄養士が食品納入業者に対して行う衛生管理指導のうち, 手指洗浄および消毒については, 「衛生管理上必要と思っている」との回答はそれぞれ82.9%, 65.7%であり, その実行率はそれぞれ40.0%, 28.6%であった.
以上のごとく今回のアンケート集計成績では, 食品納入業者および一般家庭の食中毒予防対策は必ずしも十分ではなく, 危機感の欠如がみられた.食中毒防止には衛生教育の充実をはかり, 調理作業時の衛生管理だけではなく, 食品納入業者も含めた食品取扱者への指導の徹底をはかることが重要と考えられた.
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