理科教育では,会話を重視した授業が注目されている。しかし,教室全体の会話は,学年が上がるにつれて成立しにくい。また,子どもの発言は曖昧であったり未完成であったりするため,わかりにくいなどの問題がある。局所的に発生する子ども同士の
発話
を「ローカル
発話
」とし,教室全体の
発話の成立とローカル発話
の関連について研究を行った。教室全体への
発話
が生起する場面と,
発話
が継続する場面について分析をすると,以下のようなことが明らかになった.①ローカル集団による‟意味づけ”によって教室全体の
発話
が生起している。これによって,発言に自信のない子どもであっても,教室全体の
発話
が可能になる。②ローカル
発話
は,未完成な
発話
をリアルタイムに助け,教室全体の
発話
を完結させている。これによって,子どもは安心して教室全体に向けた
発話
をすることができる。③教師は戦略的にローカル
発話
を起こし,そこから教室全体の
発話
を成立させている。ローカル
発話による子ども同士の相互作用によって教室全体の発話
が成立する事例が見られた。特に,小集団学習の形態で教室全体の学びが進行する理科学習では,ローカル
発話
が重要な働きをしている。教室全体の学びを成立させるためには,教師-子ども問の相互作用のみに注目するのでなく,ローカル
発話
による子ども同士の相互作用も考慮しながら授業経営をすべきである。
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