一般に油っ濃い魚を素揚げすると, 食味上さっぱりするといわれる.この点を明らかにするため, サバや各種魚類を用いて素揚げを行い, 揚げ時間の経過に伴う食味上の油っ濃さ・おいしさ等について官能検査ならびに脂肪・水分の消長, さらにG.L.C.による脂肪酸組成の変化を検索した.
1) サバ切身を180℃30秒, 60秒, 90秒素揚げした場合, 揚げ時間が長いほど, 水分は減少し脂肪は増加した.しかし, 官能検査結果, 最も油っ濃く感じるのは30秒揚げであり, 最も油っ濃く感じないのは90秒揚げであり, 3者の間には, 油っ濃さの差が同じくらいの間隔で認められた.
2) サバ, アジ, スズキ, マグロ (赤身) 等を素揚げした場合の水分および脂肪の消長をみると, いずれも揚げ時問の経過に伴って脱水率は高く, いずれの魚類でも程度の差はあるが, 揚げ時間が長くなるともとの脂肪含量よりも増加し, 特に脂肪含量の低い魚ほど, 脂肪増加率は大であった.
3) 脂肪含量の異なるバウンドケーキを調製して, 素揚げによる水分・脂肪の消長をみると, 魚の場合と同様に, 水分はいずれも揚げ時間と共に減少し, 脂肪の増加率は, 脂肪含量の低いケーキに顕著であった.
4) サバの素揚げ前後による脂肪酸組成の変化では, 揚げ時間の経過に伴って高度不飽和脂肪酸, 主としてC
20=1, C
20=5が揚げ油中に流出し, 逆に, 揚げ油中のC
18=2, C
18=1等が魚に吸収された.
5) 脂肪含量の低いヒラメにおいてもサバ同様の結果が得られ, 素揚げ後の脂肪酸組成が, 揚げ油のそれと同様な組成を示した.
6) 素揚げによる食味上の変化は, 脂肪の質的交代, 脱水および組織の変化に伴うテクスチャーの相違が影響しているものと思われた.
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