8頭の無麻酔立位の馬の右心房を電気刺激したところ, いずれの馬にも心房細動 (AF) を発症させ得た。
1) USCI製MPI型カテーテル (電極間隔1.7mm) を, 無麻酔立位の馬の右心房腔内に頸静脈を経てそう入して刺激電極とした。
2) 三栄測器製ES-103型電気刺激装置によって電圧10V, 持続時間20msの
矩形波
を連続2回発生させ, 1組の刺激波とした。
3) この
矩形波
の間隔を0.1秒から0.5秒まで約0.01秒間隔で延長しながら, 各間隔約10回宛心房を刺激した。
4) 最初の
矩形波
による刺激によって心房は興奮しP波が生じた。
5)
矩形波
の間隔が短い場合 (個体によって差があるが0.14-0.39秒以下) 心房は2回目の
矩形波
に反応しなかった。
6) 間隔が長い場合 (0.25-0.42秒以上) 心房は2回目の
矩形波
に反応しP波が記録された。
7) 間隔が両者の中問の場合心房は反応して, f波やP波を生じた。
8) この時期は, 最初の
矩形波
によって興奮した心房筋の受攻期と考えた。
9) P波持続時間, PP間隔, PR間隔と, 受攻期の間にとくに相関関係はなかった。
10) 前述の
矩形波
を連続発生させ, 15秒間心房を刺激した。
11) 刺激頻度は, 60/分から始め, 120/分, 180/分, 240/分, 300/分, 360/分と, 刺激停止後もAFが持続するまで, 60宛刺激頻度を高めた。
12) 刺激頻度180/分で1頭, 240/分で5頭, 300/分で1頭, 360/分で1頭と全例とも刺激停止後もAFが持続した。
13) この刺激頻度とf波頻度および受攻期の間にとくに相関関係はなかった。
14) 正常な馬の心房を, その受攻期に刺激することによって容易にAFが発症することが明らかになった。
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