アオバトの海水吸飲地照ヶ崎海岸から北へ2km ほどの標高60m程の高麗山中腹で2017年4月30日~11月20日の間の199日間、ICレコーダのタイマー録音機能を用いて、アオバトの鳴き声を日の出30分前~日の出後5時間の計5時間30分間録音した。風雨による騒音で録音内容を確認できなかった21日分を除いた178日分の中で、アオバトの鳴き声が記録された164日分の鳴き声の頻度や幼鳥の鳴き声の解析を行った。
1)調査期間178日を通してオアオ鳴きは合計15209回。1日あたり平均85回であった。
2)調査期間を通して鳴き声回数は5月後半と8月中旬にピークを持ち、その間で減少・増加、2回目のピーク後の減少がみられた。
3)鳴き声回数、晴れの日の方が曇りや雨の日よりも多かったが、調査期間を通しての減少・増加の仕方は同傾向であった。
4)鳴き出し時刻はもっとも早かったのは9月11日の日の出24分前で、飛来数の少ない5月前半と11月を除いて、晴れの日の平均鳴き出し時刻は日の出7分前、曇り・雨の日の平均鳴き出し時刻は日の出11分後であった。
5)1日の鳴き声回数は日の出後2時間以降に増加し、4 時間以降で減少する傾向が見られた。
6)ポポポ鳴きがよく聞かれた時期は期間中に3回あった。
7)9月初旬までは照ヶ崎への飛来羽数とオアオ鳴き回数の増減傾向はよく似ていた。8月下旬以降では飛来羽数は9月11日付近まで多い日が続いていたが、オアオ鳴き回数は8月25日以降で明確に減少傾向にあった。
8)オアオ鳴きは、標準的な鳴き声と異なる特徴を持ったタイプ1~3まで、計4つに分類できた。
9)標準的鳴き声は記録した全回数15209回の内99.07%を占めた。
10)タイプ1は全体の音程が大きく外れて最も苦しそうで濁った声で、句10まで完結しない鳴き声。全回数の0.22%。
11)タイプ2はタイプ1に対して句10まで完結し、全10句のうち4~7割以上の句で、音程が外れて苦しい声であるが、濁りはない鳴き声。全回数の0.26%。
12)タイプ3は全10句のうち3割以下の句が音程が外れて苦しい声であり、それ以外には標準的な鳴き声と違いは見られない鳴き声。全回数の0.45%。
13)タイプ1は7月後半より記録され、照ヶ崎における幼鳥の出現時期と重なった。鳴き声が極めて不完全であることを合わせて、当年生まれの幼鳥の鳴き声だと考えられる。
14)タイプ2は5月31日より記録され当年生まれの幼鳥ではないことが推測される。鳴き声が不完全であることと合わせて、前年生まれの個体の鳴き声の可能性がある。
15)タイプ3は前年生まれのタイプ2がその年(2年目)初夏から順次成長して、秋にはすべて標準的な鳴き声に移行した可能性がある。
16)タイプ1の声を当年生まれの幼鳥が出している場合、全ての個体が当年内に鳴くわけでは無く、一 部だけが不完全に鳴くものと考えられる。
17)前年生まれの個体の鳴き声の可能性があるタイ プ2,3は、照ヶ崎へのアオバト飛来数に伴って増加するが、2タイプの合計の割合は最大でも鳴き声全体の1.2%に過ぎなかった。前年生まれの個体はご く一部だけが鳴くのか、多くが飛来当初から標準的な鳴き声になっているのかいずれかの可能性がある。
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