夏季酷暑時を選んで, 生後21日, 体重70g前後の若いラツトに10日にわたつて20%蔗糖液を飲水としてあたえ, 水道水を飲水とした対照と比較して実験を行い, 次の結果を得た。
1.蔗糖は, 体重増加を促進しない。
2.蔗糖群の器官重量は, 肝, 腎, 心臓, 副腎, 甲状腺のいずれについても少ない。
3.蔗糖群の水分摂取量は著しく少ない。
4.肝の窒素含量は著しく少なく, 腎にも同じ傾向が認められる。
5.肝の酸素消費量は著しく少いが, 腎では差がない。
6.肝のglycogen含量は一般に高い。
7.肝のtransaminase活性は, 窒素1mg当りでは著しく高まつているが, 全肝当りでは差がない。
8.甲状腺のヨード摂取率はわずかに抑制され, ヨード有機化過程はやや促進されている傾向がある。
9.副腎のアスコルピン酸濃度はわずかに高い傾向を示す。
以上の結果は, 高蔗糖食の影響が, 夏季と冬季で著しく異ることを示している。冬季には, 高蔗糖食は蛋白の蓄積を促し, この作用の機転には副腎が密接に関与していると考えられたのに反して, 夏季には副腎皮質の関与は考えられない。恐らく高蔗糖食によつて食欲が低下し, 蛋白質と水分の摂取が減ることが主因となつて, 成長抑制その他の好ましくない影響をあらわすものと思われる。
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