本稿は、2022年にオープン予定の市原歴史博物館(I’ Museum)にて、伝統的な鍛冶文化を伝える展示デザイン作成に向けた取り組みの一環である。市内に現存する実際の工房空間および使われていた道具、機械のデジタルデータを取得し、作成したAR展示に対して学芸員や一般市民等からフィードバックを受け、展示デザインの指針を次のように導出した。
①記録対象および記録したい情報に沿った記録方法を用いる。
②動きや構造など、実物資料や文字情報では伝わりにくいものを伝えるための展示デザインを行う。
③自らがデータを操作する仕組みを導入することで対象への興味・関心を喚起させる。
展示に3Dデジタルデータを用いることで、従来の展示手法では難しかった、内部構造や動きの仕組みを伝えやすくなることが期待される。また、移動が難しい資料や、現存しない資料などを用いた博物館のアウトリーチ活動への一助ともなると考えられる。
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