神馬
はキクの中で最も生産量が多い白花輪ギク品種である.枝変わりの選抜や放射線照射等による変異育種により“黄花
神馬
”の作出が試みられているが,‘
神馬
’は黄色への変異が起こりにくい品種であり,未だ成功していない.キク花弁の白色は合成されたカロテノイドがカロテノイド分解酵素(CmCCD4a)により分解されることにより形成されることが示されている.そこで本報告では,遺伝子組換えにより‘
神馬
’における
CmCCD4a の発現を抑制し,花弁にカロテノイドが蓄積した“黄花
神馬
”の作出を試みた.RNAi コンストラクトの導入により,
CmCCD4a の発現が野生型の 10 分の 1 まで抑えられ,花の中心部がわずかに黄色に着色した形質転換体を得た.この形質転換‘
神馬
’にさらに選抜マーカーの異なる RNAi コンストラクトを二重導入することにより,
CmCCD4a の発現量を野生型の 0.4%に抑え,花弁を黄色に改変することに成功した.形質転換‘
神馬
’の生育特性を野生型と比較した結果,形質転換体の茎長や葉の大きさが野生型よりも小さい値を示す傾向が認められたが,花径には有意な差がなかった.以上の結果から,遺伝子組換えによる
CmCCD4a の発現抑制は,白色花弁を黄色に改変する技術として有効であることが示された.
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