1) 孤島の死亡者数の年次別変動には, 生存に不利な要因が増幅されてあらわれる。これを分析すれば, それら要因にアプローチする手がかりが得られよう。
2) 八丈島・同小島の年次別死亡変動について資料吟味を行い, それにもとづいてグラフを作成すると, 近世中期 (17世紀末~18世紀末) には, 地域および時期による死亡変動の増加は, 突発的かつ地域を限定して現われる。近世後期 (18世紀末~19世紀末) には, これらの差違は減少して村落間の変動がとぼしい。
3) 上記の時代的変化は, それぞれの時代における人口増加を制約する要因の変化を示す。
A. 幕府の対島〓政策が封鎖的孤立化をはかった近世中期の方針から, 開放的な本土経済への組込みによる就業機会の増大に変った。
B. その具体的なあらわれとして, 本土移住と長期出稼の許可奨励, 産物の移出などがあげられる。これにより飢饉死亡は激減した。
C. 上記の島外からの要因に対し, 島内の要因として近世中期までの村落社会の閉鎖性が弱まり, 後期には島〓社会としての一体的結合が進んだ。
D. 本土との人的交流頻度が高まるにつれ, とくに長期出稼の増加と共に伝染病にかかる確率が大きくなり, それが近世後期の病気死亡を急増させた。
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