よりよい環境で歯科医療に従事するために,歯科医師側におけるストレスをテーマにした研究が必要である。小児歯科臨床において,術者と患児とのコミュニケーションは極めて重要であるが,我々が今後働いていくうえで小児から受ける心理的ストレスを検討することは有用である。そこで今回,小児歯科診療において小児が術者に及ぼす心理的ストレスと術者の状態・特性不安の面から,心理的ストレス得点と不安得点がどのような関連性をもっているかについて検討を行い,以下の結果を得た。
1.状態不安,特性不安の両尺度間には有意な相関が認められ,状態,特性不安は互いに関与していることが認められた。
2.歯科診療における小児が術者に及ぼす術者の心理的ストレス得点は,術者の不安得点と有意な関連性が認められた。その時,その場での不安状態を示す状態不安とその人が持っている本来の性格特性である特性不安の両不安において,心理的ストレス得点の高い人は,不安得点も高いという正の相関が認められた。
3.心理的ストレス反応尺度における各項目の検討は,状態不安は6項目,特性不安では10項目,高不安群と低不安群において心理的ストレス得点に有意差が認められた。
4.小児が術者に与える心理的ストレス得点における性差,歯科医師の年齢,歯科臨床経験,既婚か未婚かの4つの項目について検討した結果,全ての項目において有意差は認められなかった。以上のことより,歯科診療における術者の心理的ストレス得点は,その人の不安傾向と関連性があることが示された。
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