トマト萎ちょう病菌レースJ3の種子伝染の実態について調査した. トマト品種ファーストは本病に特に弱い傾向があり, 根部, 茎部, 第1花房の果柄, 同小果柄及び果実内の褐変した維管束部 (果実内主維管束) から高率に病原菌が検出された. 果実内主維管束の褐変した収穫直後の罹病果実では, 維管束を経由して病原菌が種子に侵入し保菌すると推定され, この際の種子保菌率は低く, 0.8~2.5%であった. 一方, 罹病果実を収穫後放置して後熟, 腐敗させると, 後熟の過程で果実内に侵入している病原菌が腐生的に増殖して種子に侵入するが, この場合の種子保菌率は非常に高く, ほぼ100%に達した. 75℃, 7日間の乾熱による種子消毒が発芽障害も少なく有効であった. 多量の種子を処理する場合には40℃, 24時間予備乾燥を行い, 発芽障害を防止する必要がある.
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