慢性再発性アフタおよびBeh陦et病患者の血清IgDおよびIgEを定量し, 対照群 (健康人, 口腔粘膜扁平苔癬および軟部好酸球肉芽腫) のそれと比較した。IgDの定量にはLC-partigen IgD (Behringwerke社) および一元平板免疫拡散法を用い, IgEの定量には間接一元平板免疫拡散法を用いた。結果は次のようであった。
1.健康人83例のIgD平均値は25.3U/mlであり, 年代別では10歳代52.6U/ml, 20歳代19.7U/ml, 30歳代19.7U/ml, 40歳代17.5U/mlおよび50歳代15.5U/mlであった。
55例のIgE値は200U/ml以下~970U/mlの範囲に分布し, 400U/ml以上のものは10例 (18.2%) のみであり, 年代別には差がなかった。
2.口腔粘膜扁平苔癬22例のIgD平均値は11.9U/mlで, またIgE値は400U/ml以上のものが5例 (22.7%) であった。
3.軟部好酸球肉芽腫3例のIgD値は8~16U/ml, IgE値は1, 200~5, 200U/mlで, IgE値の著明な上昇がみられた。
4.慢性再発性アフタ83例のIgD平均値は33.3U/mlで, これは健康人の約1.3倍の値であり, 特に20~40歳代では約2倍の値を示した。症型別にみると, MjAUおよびMiAUとも平均値は健康人より高く, 特に前者には高値を示す症例が多かった。アフタの発作の有無による変動はほとんどみられなかった。
64例のIgE値は200U/ml以下~920U/mlの範囲に分布し, 400U/ml以上のものは10例 (15.6%) で, 健康人の分布とほぼ同じであった。年代別および症型別にも差はみられなかった。
5.Beh陦et病42例のIgD平均値は45.1U/mlで, これは健康人の約1.8倍, 慢性再発性アフタの約1.4倍であった。年代別では, 20歳代および30歳代が40歳以上より有意に高値を示しており, 特に20歳代のBeh陦et病患者は同年代の健康人に比べ有意に増加していた。症型別では, 不全型が61.2U/ml, 完全型が31.3U/mlで, 特に不全型では健康人より有意に増加していた。また症状の発作期の平均値は緩解期の約1.9倍であり, また同一症例について反復測定した結果でも発作期にIgD値の上昇が認められた。
34例のIgE値は200U/ml以下~800U/mlに分布し, 400U/ml以上のものは7例 (20.6%) であり, 年代別および症型別の差はほとんどなかった。
6.健康人, 慢性再発性アフタおよびBehget病におけるIgD値度数分布では, 健康人は0~10U/mlにピークをもつ1峰性の分布を示し, 慢性再発生アフタは10~20U/mlと50~60U/mlにピークをもつ2峰性の分布を示した。Beh陦et病では100U/ml以上の症例が多くみられた。
抄録全体を表示