算術符号は高効率符号として知られているがシンボルの符号化ごとに算術
演算を必要とするため,そのままでは符号化及び復号に多大な時間を要する.このためLangdonらのシフト型
算術
符号やPennebakerらのQコーダ,上野らのSTTコーダなどでは,領域計算における乗算のシフト演算や加減算への置き換え,領域の下位アドレスの条件設定などにより,
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符号の高速化を図っている.その結果,領域の近似が生じ,乗算型
算術
符号よりも符号化効率が低下する.しかし,近年のハードウェアの技術進歩により,乗算の高速化や記憶装置の大容量化が進んでいることから,乗算型
算術
符号での最大符号化効率を維持したうえで,高速化を実現する検討も必要と考えられる.そこで本論文では,乗算型
算術
符号における最大符号化効率を維持したうえで高速化を実現するために,無記憶情報源に対して情報源の拡大処理を導入し, 通報の確率と下位アドレスを計算するために必要となる確率値を保持するテーブルサイズを変化させ,それに伴う演算回数の削減度を調べて高速化の可能性を検討した.実験の結果,提案方式は符号化時間及び復号時間を,それぞれ,従来の2値乗算型
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符号の約13/100及び約56/100まで削減できることがわかった.
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