市販の
素焼き
ばちの焼成温度が各地の生産業者によってかなり異なる理由を検討するため, 7種類の
素焼き
ばち用の杯土 (はいど) を取りよせて焼成を行い, その物理性の変化を調査した. 坏土を圧延, 型抜きをして自然乾燥後, さらに50°Cで1晩乾燥してから, 実験用マツフル炉内で250°Cから1,045°Cまで約200°C間隔の各温度で焼成した, 上昇温度は100°C/hとし, 所定温度に上昇後, 1時間その温度を持続させた.
(1) 通気率は460°Cまでは各区ともほとんど変化しないが, それ以上の温度では各区とも増加し, また産地間の差が認められた. 875°C以上では愛知県三河地区産 (E, F区) および茨城県真壁産 (C区) のように, 1,045°Cまで著しく増加するもの, 東京産 (A, B両区, 原土は埼玉県八潮市) のように950°C前後をピークとして以後著しく減少するもの, または茨城県北茨城産 (D区) および愛知県常滑産 (G区) のように, 比較的低いが, 1,045°Cまであまり変化しないものの3種類のグループに大別された.
(2) 透水率の焼成温度による変化は, 通気率の場合と極めてよく一致しており, 通気率と同様3種類のグループにわかれた. また通気率の1/300~1/500位の値を示す場合が多かった.
(3) 吸水率と見掛気孔率の変化は極めてよく類似しており, 875°Cまでは焼成温度による相違はみられないが, 1,045°Cではどの地区産のものも著しく減少した.特に東京産の両区 (A, B) でその傾向が甚だしかった. 低温では東京産の値が大きく, 茨城県北茨城産 (D区) と愛知県常滑産 (G区) の両区が小さかった.
(4) 見掛比重はどの温度でも茨城県真壁産 (C区)が大きく, 他区間にはあまり差がみられないが, 1,045°Cでは各区とも減少した. 嵩比重では東京産 (A, B両区)が小さく, 茨城県北茨城産 (D区) が大きかった. 1,045°Cでは各区とも急激に増加したが, 特に東京産 (A, B両区) で著しかった.
(5) 本試験で作成した
素焼き片と市販の素焼き
ばちとでは, 製造工程がかなり異なるにもかかわらず, 透過性の傾向はかなりよく一致していた.
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