運輸安全委員会は国土交通省に属する組織であるが,外局であり独立性を持った事故調査機関で,航空,鉄道,船舶の事故やインシデントの調査を行い,調査報告書を公表している.調査報告書には,再発防止に資する,安全工学や信頼性工学上の示唆や教訓が含まれており,ここでは最近,公表された報告書から,代表的なものを紹介する.紹介例としては,複数回発生が繰り返されている走行中にドアが開く重大インシデントの中から,機械的不具合の事例として「ボルトの折損等の例」を,電気的不具合の事例として「車体を介してドアを開くリレーに電流が流れ込む例」を示す.また,「車両の年式ごとに異なる保守上の注意事項の申し送りが不備で配管内の水分が凍結してドアが開いた例」を示す.さらに「繰り返して発生していた不具合に対して,その都度,壊れた部分の強度のみを上げるなどの対症療法的な対策で対処していたため他の部品が疲労破壊し,燃料が過剰に供給されてエンジンから出火した例」,「不適切な軌道整備体制のため,補修が必要となる基準値を超えていたにもかかわらず整備が長期間行われなかったため,軌間が拡大して車輪が軌間内脱線した例」などを示す.
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