赤外線サーモグラフィは,現在の医療現場では殆ど利用されていない.近年,スマートフォンに専用のカメラを装着する,携帯性に優れた簡便な方式が,建築現場や電気設備の点検で利用されている.この携帯性のあるサーモグラフィにより,サーモグラフィの利用範囲は拡大すると思われる.医療現場,特に形成外科領域においては,大腿皮弁の穿通枝検索の際,スマートフォンを用いた赤外線サーモグラフィ(FLIR one)でHot spotを示す箇所が,ドップラー検査で反応のあった箇所と,高い相同性が示された.そこで,当院及び関連施設で2018年4月から2019年12月までに,臀部,下腿,腹部に皮弁作成を試みた11症例に対し,術前にFLIR oneを使用し,Hot spotにドップラー検査を施行した.全30箇所のHot spotに対し,24か所でドップラーを聴取した.感度は100%,特異度は80%で,高い相同性を認め, 視認性が良く,携帯性に優れた.またドップラー検査と併用することで, 穿通枝検索の時間が短縮された. 経済的かつ非侵襲的に,症例ごとの穿通枝皮弁の血行動態を術前に予測することも可能と考えられた.さらにあらゆる医療従事者により,創傷をモニタリングするモダリティとしての可能性もあると考えた.
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