火落ち防止対策の一環として, 清酒製造工場における火落菌の生態を, メンブランフィルターを用いて調査した。
1. 製造工程前半においては, 製麹以降の工程, すなわち麹, 酒母, 醪から僅かであるが火落菌が検出され, 現在一般に行なわれている細菌学的な管理体制のより一層の強化が必要であることを示している。
2. 消毒殺菌を行っている上槽工程を通った上槽中の清酒中からも菌が検出されており, 上槽分野のあらゆる点に再検討を行う必要がある。
3. 清酒濾過の工程では, 菌数の減少が見られるので, 火入れまでに十分な濾過を行うことが望ましい。火入後の倉内清酒からは全く検出されていない。また濾過残渣には菌が濃縮されているのでその処理に当っては注意を要する。
4. 製造場内の溝, 瓶詰場の溜り水からはかなりの菌が検出され, 清酒工場内での火落菌棲息の場と考えられる。
5.瓶詰直前の空瓶, 王冠, コルク栓等からは検出されず, 十分の管理を行えば, 製品の火落は完全に防止し得るものと考える。
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