本論文は, 台湾の視覚伝達デザイン史研究シリーズの第一部である。フィールド調査と文献資料を通して, 視覚伝達設計という用語及びその学術領域の台湾における変遷ならびにその背景を明らかにすることが本研究の目的である。研究の結果, (1)現在台湾で普遍的に使われている視覚伝達設計という用語は, 過去四, 五十年間に, 図案,
美術
設計, 商業
美術
設計, 商業設計などの相似語で使われていたこと, (2)視覚伝達設計という学術用語に至った過程において, 工芸とほぼ同じ意味である「美工設計(
美術
工芸の略語)」という用語も,
美術
設計, 商業設計などと似た意味に認知されていたこと, (3)視覚伝達設計という用語が用いられる以前に, 台湾で使われていた「図案」は, 日本人の納富介次郎の造語したデザインに対応する用語である「図案」と深く関連しており, 日本からの外来語であると推論できることが判明した。
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