本稿は,イングランド北東部の主要都市であるニューカッスルの代表的手工業ギルドの1つである製靴工カンパニーを対象として,近世の地方都市のギルドにおける
職人
が,親方・
職人
・徒弟という身分の関係の中でどのような位置づけにあったのかを検討する。カンパニー規約や議事録における
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の扱い,カンパニーの親方の下で徒弟修業を行った者や親方の息子の個人データと
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のデータとの照合から,
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はカンパニーとの関係が薄く,また親方,徒弟,親方の息子とほとんど重ならないことが明らかとなった。さらに,
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の雇用状況についても離職率を用いて検討を行った。その結果,
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の大多数は,親方と短期的な雇用関係を結ぶだけの者であったことが明らかとなった。これらは,
職人
のカンパニーとの関係が希薄で,
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の労働市場が流動的であったことを示している。また,このことからカンパニーは親方と親方予備軍である徒弟もしくは息子を中心とした組織であったと考えられる。このような組織形態は,成長する都市において,ギルドがその中核となる構成員を養成しつつ市場に即した活動を行うことを可能にするものであった。
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