ヒトの舌骨筋群の機能を形態学的に解析するために, 最大筋腹横断面における筋線維の数, 太さおよび密度を計測し, ヒトの他筋と比較検討した.材料はホルマリン・アルコール注入屍14体 (♂: 10, ♀: 4) から得られたもので, 組織標本はツェロイジン包埋, H・E染色によった.結果は次のごとくである.1.舌骨筋の筋腹の横断面積, 1mm
2中の筋線維数, これらを元にした断面の筋線維総数, 筋線維の太さの平均値 (μ
2) , および密度はいずれも手の筋のそれに最も近かった.
2.以上の筋線維総数, 筋線維の太さおよび密度によって舌骨筋群を分類すると最もよく発達した顎二腹筋前腹とオトガイ舌骨筋, 中等度の顎舌骨筋, 甲状舌骨筋, および胸骨舌骨筋, これよりもやや劣る胸骨甲状筋と
肩甲舌骨筋
の上・下腹, 最も劣っていた茎突舌骨筋に分けることができた.
3.以上のことから舌骨筋の筋線維構成は喉頭の挙上と前方移動に関与する筋ではよく発達し, 後方移動に関与する筋はやや劣り, 舌骨の固定維持のみに関与する筋ではさらに弱いと考えることができた.
4.筋線維の太さの大小は必ずしも年齢とは一致しなかったが, 筋線維の太さの分布型から見て, 正規分布型が基本で, 筋線維の減少に伴って代償性の筋線維肥大を起こし, 低分布型となり最後にすべての筋線維が小さくなって急峻型を示すという退縮過程が考えられた.
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