本実験は, 1967年3月18日より同年9月26日まで, 東京農業大学熱帯植産研究室附属実験圃場で行ったものである.
苗の育成には特殊の紙筒, すなわち「ニッテン・ペーパー・ポット (No.7直径10cm×高さ10cm) 」を用い紙筒
育苗区と普通育苗
区共に3月の外気低温を補うためビニールで二重にトンネル状に覆い, 苗床への植付けは3月18日, 3月28日, 4月7日に10日の間隔で遅らせながら60日苗, 50日苗, 40日苗を仕立て, 5月16日一斉に本畑へ定植し, 活着及びその後の生育状況を調査した.本実験結果の大要は次ぎのごとくである.
1. 紙筒苗床は普通苗床よりも, 乾燥し易かったために
育苗期間中では紙筒育苗は普通育苗
に較べ生育がやや劣った.
2. しかし本圃定植後は, 逆に
育苗
日数の長短にかかわらず, 紙筒
育苗
は植傷み少なくその後の生育が優った.
3. 移植時の苗令と移植後の植物体の再生との関係については, 紙筒
育苗
では苗令の進んだものが植傷みはやや多かったが, 移植後の回復が早く生育に良い結果を示した.しかし, 普通
育苗
区では必ずしも移植時の苗令による移植後の生育には優劣を下し得なかった.
4. 紙筒
育苗は普通育苗
に較べて移植後の活着良く, その後の生育も良好であるから, 株出栽培により生ずる欠株く補植用苗として役立つものと思われる.
5. 普通
育苗
においては移植後, 枯死株は殆んどないにかかわらず, 何故に活着に日時を要するか, 逆に何故に紙筒
育苗
が移植後前者に較べて活着が良いかについては, 移植後の根系調査により, ほぼこれらの原因を明にすることができた.
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