脂肪移植を理解するために必要な基礎知識について, 解剖, 生着機序, 幹細胞に分けて概説する。脂肪組織は毛細血管に富んだ組織であり, その血管周囲に張り付く形で脂肪由来幹細胞 (CD31陰性 / CD34陽性) が存在している。移植する脂肪組織は, その採取の過程で一部の細胞が死滅していること, 移植後はさらに中心部が壊死に陥ることが知られている。脂肪移植における生着率を高めるためには, 移植する時点での細胞死を最小限にすること, できるだけ小さな塊で多くの層に広く均等に移植することなど, その手技が非常に重要である。移植される脂肪組織に含まれる脂肪由来幹細胞は, 肝細胞増殖因子や血管内皮増殖因子, 各種インターロイキンなど, さまざまなサイトカインを分泌することが知られている。そのため, 脂肪移植においてはボリューム補充による形態的改善の効果のみならず, 機能的改善の効果も期待できる。
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