特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)の治療には副腎皮質ホルモンを主体とした内科的治療と
脾臓摘出術
(以下脾摘)が施行されてきた.近年, ITPに脾摘を施行した成績は内科的療法の寛解率よりも良好であると報告されている.しかし,未だ脾摘の有効性を術前に予知する方法は確立されていない.今回, ITPに脾摘を施行した8例の脾摘の結果と術前,術後の検査所見を対比し,術前あるいは,術直後に脾摘の有効性を判定しうるか否かを検討した.
観察対象は最近脾摘を施行したITP 8例であり, 8例中7例は術前に内科的療法を受け, 1例は脾摘を第1治療法とした.脾摘の効果判定は術後1ヵ月以後の平均血小板数が150×10
3/cmm以上に維持された症例を完全寛解とし,術前の血小板数より増加した症例を有効と判定した.術前検査項目として,年令推定発症時期から脾摘までの期間,術前1ヵ月以内の平均血小板数と平均血小板容積,
51Cr法による血小板寿命と血小板破壊場所(脾/肝比)を取り上げ,術後検査項目として,血小板数の最高値,血小板数が最高値に達するまでの期間,平均血小板容積の変化,脾重量を取り上げた.
完全寛解例は8例中4例,有効例は3例,無効例は1例であった.完全寛解例群と有効および無効例群に分け,術前検査6項目を対比した結果,完全寛解例では平均血小板数が有効および無効例群に比し高値であり,血小板破壊場所では脾優位で脾/肝比が高い例が多くみられた.その他4項目では両群に明らかな差はなかった.次に術後検査4項目を対比した結果,完全寛解例では術後血小板数の最高値が400×10
3/cmm以上であり,平均血小板容積の減少が認められた.脾重量では重量の重い症例の多くに完全寛解例が認められた.
術前検査のみでは脾摘の効果判定は困難であるが,術後数週の経過を加味することにより,予後の判定は可能であると考えられた.
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