東北地方のススキ型草地は,放牧利用によりシバ型草地に移行することが知られている。その一方で,微地形などの条件次第では,低木が優占する。そこで,このような遷移の違いが生じる機構を明らかにするため,放牧歴の異なる三つの野草地において
腐植土
層の厚さと植生との関係を調査した。調査草地は,放牧0年(未放牧区),6年(放牧A区),15年(放牧C区)のものである。1. 本調査地での
腐植土
層の厚さは,地形と密接な関係があり,凸型斜面では25cm-50cmと薄く,凹型斜面では50cm-110cmと厚くなっていた。2. 未放牧区はススキ優占地が多いが,チマキザサやタニウツギ優占地も存在した。チマキザサは
腐植土
層の薄い凸型斜面に,タニウツギは
腐植土
層の厚い凹型斜面に分布していた。3. 放牧A区のススキの被度は未放牧区に比較して低かった。また
腐植土
層の厚い凹型斜面はタニウツギの優占地が多く,
腐植土
層の薄い凸型斜面の数地点にはシバの分布が見られた。4. 放牧C区の優占種はシバとタニウツギであった。シバは
腐植土
層の薄い凸型斜面のみに,タニウツギは
腐植土
層の厚い凹型斜面のみに限定して分布した。以上の結果から,ススキ型草地の放牧影響下の植生遷移は
腐植土
層の厚さによって異なる。すなわち,
腐植土
層の薄い凸型斜面ではススキやチマキザサの優占群落からシバ優占群落へと遷移し,
腐植土
層の厚い凹型斜面ではススキ優占群落からタニウツギ優占群落へと遷移することが明らかとなった。
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