【はじめに】
超音波による
腹横筋
筋厚の測定や腰痛との関連についての報告は散見されるが、
腹横筋
・内腹斜筋の安静時から収縮時の筋厚変化率と腰痛との関連についての報告は少ない。
【目的】
腹横筋
・内腹斜筋の筋厚変化率と腰痛との関連について明らかにすること。
【方法】
対象は腰痛群18名(男性15名,女性3名,平均年齢29.5±6.2歳)健常群16名(男性12名,女性4名,平均年齢26.8±3.6
歳) で、事前に研究の目的と内容を説明し承諾を得た。腰痛群は3 か月以上腰部に痛みが持続している、もしくは軽減と増悪を繰り返している状態とし、除外基準は発症から4 週以内の急性腰痛、神経学的所見がある者とした。座位にて安静吸気終息時( 以下: 安静時) およびドローイン時の
腹横筋
・内腹斜筋を、超音波診断装置( フクダ電子UF-760AG)で測定し、左右の平均値を筋厚として各群の安静時とドローイン時の筋厚と筋厚変化率(Active-Rest/Rest ×100,A/R 比) を比較検討した。
【結果】
両群間の年齢、性別に有意差はなかった。収縮時の筋厚は腰痛群(
腹横筋
:5.3±1.8cm, 内腹斜筋:12.1±3.5cm)と健常群(
腹横筋
:6.1±1.3cm, 内腹斜筋:10.9±2.5cm)で有意差はなかった。
腹横筋
A/R 比は腰痛群(73.3±44.7%)に比べ健常群(112.8
±44.3%)で有意に大きかったが(p<0.05)、内腹斜筋A/R 比は腰痛群(86.2±44.8%)と健常群(67.7±30.2%)で有意差はなかった。健常群では内腹斜筋A/R 比に比べ
腹横筋
A/R 比が有意に大きかったが(p<0.01)、腰痛群においては有意差がなかった。
【考察】
腰痛の有無が
腹横筋
・内腹斜筋A/R 比と関連している可能性が示された。健常群では
腹横筋
が優位に活動していたが、腰痛群においては
腹横筋
に比べ内腹斜筋の活動が増大する傾向がみられた。腰痛の有無による筋厚の差がみられなかったため、超音波による
腹横筋
の評価では筋厚だけでなく、
腹横筋
A/R 比および
腹横筋
A/R 比と内腹斜筋A/R 比の比率についても考慮する必要があると考えられた。
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