β-lactamase阻害剤であるsulbactam (SBT) とampicillin (ABPC) をエステル結合したsultamicillin (SBTPC) の基礎的臨床的検討を行なった。
1) 基礎的検討
NZW家兎 (一群3羽) を用いSBTPC85mg/kgを経口投与し, ABPCとSBTの血中濃度及ひ歯肉,
舌
, 耳下腺, 顎下腺, 頸部リンパ節, 歯髄の組織内濃度を測定した。ABPCのTmaxは血清0.65 (hr),
舌
0.70 (hr), 歯肉0.71 (hr), 顎下腺 0.70 (hr), 耳下腺0.69 (hr), 頸部リンパ節0.75 (hr), 歯髄0.70 (hr) であった。SBTのTmaxは, 血清0.64 (hr),
舌
0.69 (hr), 歯肉0.70 (hr), 顎下腺0.69 (hr), 月下腺0.69 (hr), 頸部リンパ節0.68 (hr), 歯髄0.96 (hr) であった。
ABPCのCmaxは, 血清8.25 (μg/ml),
舌
3.85 (μg/g), 歯肉4.69 (μg/g), 顎下腺2.17 (μg/g), 耳下腺2.24 (μg/g), 頸部リンパ節1.46 (μg/g), 歯髄2.73 (μg/g) であった。SBTのCmaxは, 血清6.10 (μg/ml),
舌
2.72 (μg/g), 歯肉4.30 (μg/g), 顎下腺2.65 (μg/g), 耳下腺2.64 (μg/g), 頸部リンパ節1.42 (μg/g), 歯髄2.36 (μg/g) であった。
ABPCのCmaxは, 血清<歯肉<
舌
<歯髄<耳下腺<顎下腺<頸部リンパ節の順であり, SBTのCmaxは, 血清<歯肉<
舌
<顎下腺<耳下腺<歯髄<頸部リンペ節の順であった。実測値をもとに, 血清についてはtwo compartment model, 各組織についてはthree compartment modelを用い薬動力学的解析を行ない, parameter及びsimulation curveを求めた。
薬動力学的解析によって得られたsimulation curveは実測値に対してvisiblefitしていた。
2) 臨床的検討
35例の口腔外科領域感染症に対し, SBTPC3錠 (375mg×3) を食後分割投与した。投与期間は平均4.4日であった。口腔外科領域の抗生物質の効果判定基準に従った点数判定では, 81.8%に有効であった。
細菌の検索は16例より33菌株か検出された。好気性グラム陽性球菌が16菌株検出され, 最も多かった。
臨床検査結果では, 好酸球増多症が1例にみとめられた。
副作用は計7例にあり, 6例は下痢, 軟便, 残りの1例は胃痛であった。
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