加工トマトの「自由化対応期」後の70年代における加工資本の動向は,キリンビールなどのジュース分野への新規参入があったものの,販売部門に限られたため,原料産地の再編はなかった.渥美町の加工トマトは国内で最も早く収穫されるため加工資本から優遇されている.
一方,渥美町は日本における高位農業生産力地帯にあり,そのなかにあって加エトマトは契約農業による低位安定価格の特色をもつので,主力作物とはなれなかった.高木地区での農家事例によれば,農業専業的色彩を強くもった農家であって,耕地利用ではタバコを栽培せず,キャベツよりもむしろ大根を多く栽培し,施設園芸では電照菊,夏菊は多くあっても,メロンをそれほど多く栽培していない農家において,加工トマトが栽培されている.加エトマトの農業暦は主力作物のそれにゆがめられて,7月中に多く収穫できるように強制されている.加工資本は,農家経営内的に強制された早期収穫をうまく利用しているのである.
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