健康の維持または増進に役立ち得る食品を提供することは,今や先進国のみならず開発途上国においても重要な課題である.そのような食品の代表格の一つは,魚に代表される水産物である.人は,長期にわたって魚を食しており,その良質な動物性タンパク質,低カロリー,および脳機能の改善といった特徴については,従来から注目されてきた.
株式会社極洋の取り扱い魚種であるマンダイ(別名アカマンボウ)は主にマグロの混獲魚として水揚げされ,その身質もマグロに似ており古くから食されてきたが,近年の研究によりイミダゾールジペプチドの1 種であるバレニンを高含有することが見い出された.しかし畜肉や鰹鮪に含まれるカルノシン,アンセリンと比べ,バレニンはマイナーな存在であり,その研究は進んでいない.そこでマンダイがバレニン研究において有益な供給素材であることを示す目的で,マンダイ中のバレニンの様態を調査した.まずは体内での分布を調査し,エキス製造において普通筋が適していることを示した.そして,エキス中のバレニン濃度を安定して得るためには普通筋の色選別が重要であることを示した.さらに高純度バレニンの製造に役立つ知見,およびその光学純度が市販の標準品と差異がないことを見い出し,マンダイはバレニンの機能性研究用素材として期待できるものであることが示された.
抄録全体を表示